クライ マイ ガール HIROSAKI 1990
ステイ オン タブ引きながら外人に長勝寺への道を教える
ヴィアノヴァで返すポケベル電波とはせつないくらい目に視えたもの
しあわせを売ってくださるはずでした代官町のとある雑貨屋
この星は止まる他人の顔をして黄昏橋を君が渡れば
ロビンソン、この詩はなに?と問うたのは伯父が愛してやまない鸚鵡
家々の夕べの窓に青みさすテレビジョンそうテレビジョン
団欒をぬけたひとりの少女なり本体はまだ団欒の中
複雑な気持ちで君を見送れどバス停の名はただの「梨の木」
とっこ
思い出すこともあらんか茜さす独狐の坂で犬ふりかえる
彼はもういないと告げるわたしから紙漉町を過ぎるわたしへ
月は高く自動販売機は低くデネガ通りに缶落ちる音
紺屋町今夜三日月☽ホ短調たたんで休む合歓の幼な葉
おいのもり
狼森きのうは何に泣いたのか思い出せないまた嵐きて
蛇が棲むひとつひとつの石垣に口をとざして歌う月光
祖父が生前手帳に大事にはさみしは劇団員の募集広告
わたしこそ不在はるかな平野から鳥を弔う煙があがる
おばあちゃんにはありがとうと言うくせがある話しかけてもうすぼんやりしてるのに
ないじょうし
どんな子がきっと私に似てる子が撫でていたのだろう撫牛子
月下では青きをまとう陽下にて麦の穂波をすすむ胸部は
お天気で紺屋町にははらひらと洗濯物が干してあるな
なまこは海なめこは山しんしんと夏になったら海に行かねば
五丁目のラーメン屋のおやじのように無愛想に時間は過ぎる
泣くことは明日の仕事スーパーの籠に投げ込むポテトチップス
手放したあとに追伸を思いつくけれどもすでに高い風船
『キャプテン』のイガラシがはじめてマウンドにあがった姿みたいな 虹
葉を落とし冬がまえする森の木もみなパサジェルカわれと呼吸す